今回は「カフェ」と「カフェー(カフエー)」の違いについてです。
単なる書き方の違いと思われがちですが、実際はこんな違いがあります。
- カフェ:コーヒーや食事ができるお店や喫茶店
- カフェー:女給が接待し、料理やコーヒー、酒をふるまう店。カフエー。
カフェーは、20世紀前半に流行した形態で、飲食よりも女給による接待がメイン。そういったタイプのお店です。
つまり、今、一般的に「カフェ」と呼ばれているものとは違うってことですね。
この時代について書かれた記述や、作品などにでてくる「カフェー」も後者を指している可能性が高いです。
たとえば、谷崎潤一郎の「痴人の愛」に出てくるナオミも、「カフェー」の女給ですね。
カフェとカフェー(カフエー)は違う
この違いを知っておくと、よく言われている「カフェと喫茶店の違い」についても、解釈のしかたがずいぶんと変わってきます。
多くのサイトでは「カフェと喫茶店の違い」について、このように解説しています。
- カフェ→「飲食店営業」許可を取ったお店
- 喫茶店→「喫茶店営業」許可を取ったお店
この根拠は、「食品衛生法施行令 第三十五条」に「カフェ」と「喫茶店」があるからというものです。
・・・が、「カフェとカフェーの違い」をふまえて条文をみると、その前提が崩れます。
「食品衛生法施行令 第三十五条」には、このようにかかれています。
一 飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。)
そう、ここに書かれているのは、カフェじゃなくて「カフェー(カフエー)」のことです。
ちなみに法関連では、風営法にも「カフエー」の表記があり、こちらでも「カフェー」の意味で使われています。
つまり、多くのサイトで解説されている「カフェと喫茶店の違いは、営業形態の違い」は、「カフェーと喫茶店の違い」ということになりますね。
喫茶店営業と飲食店営業とは
先ほど出てきた「飲食店営業」と「喫茶店営業」について、もう少しくわしくみていきましょう。
「食品衛生法施行令 第三十五条」には、このようにかかれています。
一 飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。)二 喫茶店営業(喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。)
許可を受けると、それぞれ次のような形で営業できます。
- 飲食店営業:飲み物のほかに料理やアルコールを出すことができます。
- 喫茶店営業:飲み物、茶菓のみ。アルコールは×。一部軽食をのぞき店内調理は×
営業許可の種類によって、お客さんに出せるものが違うというわけですね。
カフェと喫茶店と営業許可の関係
カフェや喫茶店を開く時は、「お客さんに何を出したいか」でどちらの許可を受けるかを決めます。
どちらの営業許可でも、お店の名前には「カフェ」「喫茶店」のどちらでも使うことができます。
▼喫茶店営業、飲食店営業といえば、こんな記事もあります。
カフェーの歴史をざっくりと
さて、今ではなじみのない「カフェー(カフエー)」について、どんなものかざっくりとみていきましょう。
カフェー(カフエー)は、女給を置いて食事やコーヒーやお酒を提供するお店としてはじまったといわれています。
もとは飲食メインだったそうですが、次第に女給による接待がメインになり、風俗営業という扱いになっていきました。
ベースとなったのは、海外の「カフェ」ですが、日本では女給を置くスタイルから始まり、次第に変遷していったということですね。
文学作品におけるカフェー
文化人が通っていた記述も多く残っており、冒頭に紹介した谷崎潤一郎のほか、永井荷風などの作品にも出てきますね。
カフェーのイメージで読むと、印象が変わるかもしれませんね。
まとめ
今回は、カフェとカフェー(カフエー)の違いについてでした。
文字だけをみると、単なる表記のゆれ(書き方の違い)にみえますが、ずいぶんと違うことがわかりますね。
小説でもこの点に注意してよむと、また違った解釈ができそうですね。