先日、藤沢周平さんの「隠し剣 孤影抄」を読みました。これ、めちゃくちゃ面白いですね。
ふだん、時代小説を読まないゆずもちでも、思いっきりハマってしまいました。
タイトルに「隠し剣」とあるように、代々伝えられてきた秘伝の剣をモチーフにした短編集です。
「邪剣竜尾返し」「臆病剣松風」「必死剣鳥刺し」など、様々な秘伝の剣が出てきます。
と、書いているうちに、ふと思いました。
時代小説と歴史小説って何が違うんだろう……
というわけで今回は、時代小説と歴史小説の違いについてお届けします。
時代小説と歴史小説の違い
ゆずもちは、時代小説と歴史小説は「呼び方の違いぐらいかなあ」と思っていたのですが、定義としては次のような違いがあります。
時代小説とは
時代小説はかんたんにいえば、時代劇の小説版です。昔を舞台にしていますが、架空の要素が入っていてもOK。
時代小説には、主に次のような特長があります。
- 登場人物は架空の人物でもOK(歴史上に存在しない人物など)
- 実在の人物が登場しても、史実とは違う行動や設定をしてもOK
といった点があります。
架空の人物でいえば、銭形平次が有名ですね(野村胡堂の「銭形平次捕物控」がモチーフ)。
また、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」のように、人物は実在はしたけれど、史実とは違う設定や行動がされているものも、時代小説にあたります。
現在の「坂本龍馬」のイメージはこの小説から!と言われる作品ですね。
そのほか、山田風太郎の忍法帖シリーズのように、人物が人間離れした忍法を使うものなども時代小説にあたります。
これも名作ですなあ!
歴史小説とは
つづいて、歴史小説についてみてみましょう。こちらは、次のような特長があります。
- 実在した人物を中心に、史実通りまたは史実に近い形で展開する
- わき役等に架空の人物を出してもOKだが、展開には影響を及ぼさない
といった点があります。あくまで「史実に即した物語」であることがポイントですね。
つまり、鬼平犯科帳みたいに「人物は実在したけれど創作がメインなもの」は歴史小説ではないわけですね。
歴史小説で有名なところでは山岡荘八の「徳川家康」などがあります。
歴史小説は、史実ベースであれば、多少のフィクションが入る余地があります。特に、会話部分は作者の創作が入ってもOKとされています。
「隠し剣」シリーズは時代小説か歴史小説か
さて、 時代小説と歴史小説の違いをみたところで、冒頭に挙げた藤沢周平「隠し剣」シリーズをみてみましょう。
このシリーズは「隠し剣 孤影抄」のほかに「隠し剣 秋風抄」があります。
どちらも江戸のころを舞台にしていますが、架空の人物、架空の物語、架空の剣術をもとに紡がれています。
史実ベースでなく創作が主になっているので、これは「時代小説」という分類になるわけですね。
まとめ
「時代小説と歴史小説は何が違うんだろう」と思っていましたが、定義としてはかなりの違いがあることがわかりますね。
ただ、明確な線引きがあるわけではないので、作品によっては「どちらともいえる」小説もあります。